日本時間の10月7日、イスラエルに大規模なロケット攻撃がありました。
パレスチナのガザ地区から数千発のロケット弾が発射されたとのことで、事実上の開戦状態となっています。
攻撃を仕掛けたのは『ハマス』と呼ばれるイスラム系組織です。
ニュースでよく流れる『ハマス』という名の組織はどのようなものなのか?
そしてなぜハマスはこのような大規模な攻撃を仕掛ける必要があったのか?
誰もが理解できるように分かりやすく解説してみたいと思います。
読みやすいように、ところどころフランクな表現を使っていますのでご了承ください。
ハマスとは?現在起きていること
10月7日、何の前触れもなく突然イスラエルに行われたロケット攻撃の映像がこちらです。
この攻撃を仕掛けたのがイスラム系組織ハマス。
ちなみにハマスというのは国名ではなく、
『パレスチナ自治区』の中にある『ガザ地区』という場所を実行支配している『イスラム系組織』
のことです。
このイスラエルに囲まれたガザ地区から、イスラエルに向けて数千発のロケット弾が突然発射されたわけです。
当然イスラエルにとっては寝耳に水。
イスラエルのネタニヤフ首相はこの攻撃の直後に「戦争状態にある」と声明を出しました。
ハマスは大規模な軍事作戦の開始を宣言し、イスラエル軍もハマスの拠点に報復の空爆を始め事実上の戦争に突入しています。
ガザ地区とイスラエルの死者は10月8日正午時点で数千人規模に上ると見られ、
SNSでは目を疑うようなショッキングな現地の映像が次々に投稿されている模様です。
では、なぜハマスはイスラエルに攻撃を仕掛けたのでしょうか?
歴史的な背景を見ていくと分かりやすいと思います。
ガザ地区はイスラエルから領土を奪われてきた!?
先ほど紹介した地図のガザ地区を見て、「小せぇ!」と思う人が多いのではないでしょうか。
その通り!まさしく長い歴史の中で、領土を追われてきた今の姿がパレスチナ自治区(ガザ地区)と言えます。
現在のような戦争状態になった背景として、
まずは「パレスチナ自治区は、長い歴史で領土を奪われてきた」ということを理解しましょう。
その“追われてきた側”の『パレスチナ自治区』の中の、
『ガザ地区』が今回イスラエル側に攻撃を仕掛けたということです。
領土の大きさで言うと、アリがゾウに戦いを挑んだようなものと言えるかもしれません。
ちなみに『ガザ地区』はとても狭いだけでなく、とても貧しい地区ということも覚えておきましょう。
とても貧しい生活を送りながら、狭い場所で200万人がひしめき合って生活している地区。
檻で周囲を仕切られていることもあり『天井のない監獄』とも呼ばれています。
そのガザ地区を実効支配している組織が『ハマス』ということになります。
ここまでを見ると、
ガザ地区かわいそう!領土を奪われてきたから、イスラエルに反発したんだな!
と思ってしまいそうですが、実はそんな単純な話ではありません。
もっと歴史を遡ると、イスラエルの人たちも可哀想と言わざるを得ない事件がありました。
話はなんと2000年も前に遡ります。
2000年前から続く「俺たちの土地」問題
今から約2000年前、現在のパレスチナ自治区を含むイスラエル一帯はユダヤ人たちの国でした。
ユダヤ教の教えでもこの辺り一帯は『約束の地』とされており、
当時のユダヤ人たちは「ここが俺たちの国だ!」ということで生活を始めます。
ところがそこへローマ帝国がやって来て、せっかく築いたユダヤ国は奪われてしまいます。
イスラエル(ユダヤ系)の人たちにとっては「俺たちの土地」
困ったユダヤの人たちは世界中に散り散りになって、世界各地でそれぞれ新生活を始めることになります。
ただし「いつかは俺たちの土地(約束の地)に戻れる」と信じて。
自由と尊厳を奪われたユダヤ人たちは、世界各地で尋常ではないほどの努力をし、
各国で商売・事業を成功させ大きな富を築くことに成功します。
ちなみにFacebookの創始者・マーク・ザッカーバーグや
スターウォーズ等の映画監督であるスティーブン・スピルバーグはユダヤ人の成功者として有名です。
世界各地で富を築いたユダヤ人たちに対して、今度はイギリスが歩み寄ってきます。
今こそあなたたちの国を取り戻しませんか?我々が協力しますぜ!
ちなみにこのときは第二次世界大戦勃発時(1945年頃)でした。
第二次世界大戦当時と言えば、ユダヤ人にとって歴史上最も屈辱的で悲しい出来事があったタイミングです。
そう、ナチス・ドイツに多くのユダヤ人が捕らえられ、アウシュビッツ収容所で大量の虐殺が行われました。
のべ600万人のユダヤ人が虐殺されたと言われています。
この大事件により、ユダヤ人たちの怒りや悲しみはピークに達しました。
そしてイギリスから「国を取り戻しましょう」の誘いを受けたことも重なり、
1948年に『約束の地』にイスラエルを建国することに成功したのです。
ここまでを見ると、
ユダヤの人たちおめでとう!やっと『約束の地』に戻ってこれたね!(泣)
と感動で終われそうですが、実はそんな単純な話ではありません。
次に困ったのは1948年以前に、もともとこの地に住んでいたパレスチナの人々です。
パレスチナ(アラブ系)の人たちにとっても「俺たちの土地」
「ローマ帝国が突然やってきて、ユダヤ人たちが世界中に散り散りになった」という説明をしましたが、
その後、ローマ帝国は滅亡しました。(476年)
空き地となった場所には、貧しいパレスチナ人たちが新しい生活を求めて住み始めます。
そこから約1500年もの間、パレスチナの人々は生活してきたわけです。
当然1500年も生活していると、そこはもう「俺たちの土地」になりますよね?
ところが1948年に突然ユダヤ人たちがやって来るわけです。
「ここは俺たちの約束の地だから明け渡せ」と。
そして、約1500年間生活してきた土地をイスラエル(ユダヤ)に少しずつ奪われていっているのが
パレスチナ自治区ということになります。
ハマスはパレスチナ人の尊厳を守る武装集団!?
そのパレスチナ自治区の中の狭くて貧しいガザ地区。
ハマスはイスラム武装組織で、ガザ地区を実効支配しています。
イランから武器供与などの支援を受けており、「イスラエルによる占領」を終結させ、国家の樹立を目指しています。
ただしガザ地区の人々の生活は困窮しており、「金はないが武器はある」といった皮肉な状況が
ハマスの過激な戦闘思想を助長しているのかもしれません。
実はハマスの攻撃はこれまでも幾度となく行われてきましたが、
今回のイスラエル国内への攻撃は1948年のイスラエル建国以来で最大規模との指摘もあるようです。
長い歴史の中で、「天井のない監獄」の中で受けてきた屈辱。
自分たちの領土と尊厳を奪還するために、奇襲作戦に出たのではないでしょうか。
しかも攻撃を仕掛けた10月7日はユダヤ教信者にとっては連休の最終日。
イスラエルの人々にとって9月30日~10月7日はSuccot(スコット)と呼ばれる大型連休なのです。
ちょうど50年前にエジプト・シリア軍がイスラエル軍に奇襲攻撃を仕掛けたのが1973年10月6日でした。
(第4次中東戦争)
この歴史になぞらえて、狙ったタイミングだったのではないかと言われています。
イスラエルの報復攻撃も早かったため、事態は一気に緊迫化しています。
ハマスは見方によっては正義の集団のようにも見えますが、
今回の戦火でイスラエル人に対する残虐な行為がSNSによって複数投稿されており、
その行為に「残酷すぎる」などの声が世界中で多く上がっているようです。
終わりに
2000年にも渡る迫害に遭いながら、想像を絶するほどの怒りと悲しみの末に「約束の地」を取り戻したユダヤ系のイスラエル。
そして1500年もの間、暮らしてきた土地を突然奪われて、「パレスチナ難民」として苦しみ続けているパレスチナ自治区の人々。
さらにそのパレスチナ自治区の中の、「天井のない監獄」で貧しい生活を余儀なくされ続けてきたガザ地区の人々。
「どちらが正義でどちらが悪」とはとても言い切れない、人類に突きつけられた超難問だと思います。
この記事は、現在起きていることを誰もが理解できるようになって欲しいと思って書きました。
ところどころ説明の詳細を省いた部分もありますが、
深く追求すればするほど、難しい問題であることが分かります。
一人でも多くの方がこの問題に関心を持つキッカケになってくれればと思っています。